2021年12月30日木曜日

7年勤めた会社を退職しました

新卒から7年9か月勤めた会社を退職しました。
自分の気持ちを客観的に見直す意味も込めて退職エントリーを書いてみます。
具体的な会社名を出すのはあまりよろしくないと思っているので、会社はなるべく特定されないように書いてますが、たぶん見る人が見ればすぐにわかるような気もします。


振り返り



入社まで


地元の大学で数学科にいたのですが、そのとき受けた符号理論の講義がビビっときて「こんな簡単な数学で情報の信頼性が成り立つのか!」と感銘を受けました。
もともと「数学が世の中で役に立つところをこの目で見たい」という思いはあったのですが、それが情報セキュリティの分野であると確信して「情報セキュリティにかかわる理論を学び、その現場で働きたい」という目標ができて、大学院のゼミで暗号理論を学びました。

ただ、ドローカルの大学から都心に出て情報セキュリティの仕事をするのは現実には厳しいと思っていて、地元のIT企業を中心に就活をしていました。
その中で1社だけ様々なセキュリティプロダクトを扱っていて本社が東京にある大企業を受けたところ、奇跡的に内定をいただくことができて、入社しました。


これまでの業務


新入社員研修を終えて、無事に希望通りセキュリティプロダクトを扱う部署に配属されることができました。
最初の3年間はプロダクトの導入前支援をメインで行うチームに配属されて、問合せ対応や検証作業を通して技術スキルを身につけながら、導入ガイドなどのドキュメントを作成したり、販促セミナーの資料作成と講師をしたりしていました。
その後、プロダクトの導入後支援をメインで行うチームに異動して、これまでやってきた業務も継続しながら、クレームとなった障害案件が発生したときにお客様先に訪問して現地でトラブルシューティングして復旧作業を行うなどの業務をしていました。

ここ2~3年はチームリーダーやPM的な役割を担うようになり、それと並行して業務効率化に必要なインフラ整備の旗振り役をしたり、さらに本部内の情シス役としてご時世に対応すべく在宅勤務の環境整備をしたりしてました。

また、ライフワーク的業務として、インフラ構築を生業とする部署と合同で開催する新入社員(配属後)研修で、セキュリティやネットワークの基礎を教える担当の講師を6年続けておりました。
最初はありものをつぎはぎした間に合わせでしたが、毎年カリキュラムと資料を更新し続けた結果、きちんと知識が体系づけられて身につくようなカリキュラムになり、資料は全部イチから手作りしたものに置き換わりました。自分で言うのもなんですが、けっこう自信作です。

ここまで書いてきて、7年間で本当にいろいろな業務を経験することができたと実感しています。



退職の理由



拾ってもらった恩義もありますし、不満に思うことも数あれど、いいところも探せばたくさんあります。
会社としてもなんとかして現状の不満をつぶしていこうという姿勢は見えており、実際にここ数年でだいぶいろいろな改善も見られてきました。
しかし、以下2つの理由から、現在の会社で働き続けるよりも外に出たほうがよいという判断に至って転職を決意しました。


理由1:市場価値の高いセキュリティエンジニアとしてキャリアを積みたい


いろいろな理由を考えましたが、個人的な理由はすべてここに収束します。

「チームリーダー的な役割を担うようになり」と先ほど言いましたが、メイン業務はグループ企業の関係各所との調整と内部向け資料の作成でした。
いちおう各案件もなるべく見るようにはしているものの、自分で技術的な業務をできることはめったになく、いつの間にかSEとは資料エンジニアの略称となっていました。

もちろん、関係各所との調整は非常に重要ですし、こういう経験を重ねて最終的にマネジメント職となるキャリアプランも自分の中で持っていました。
ですので、若輩者の自分にこのような業務を経験させてもらったことについては感謝もしています。

しかし、セキュリティエンジニアとして必要な技術スキルがまだ発展途上のタイミングで求められる役割が変わったこともあり、予想以上に技術スキルの貯金の底がつきそうになるタイミングが早く、日進月歩の業界で埋め合わせが追いつかない実感が日々増してきました。
2~3年前までは休日の時間でAWS SAPの取得に取り組んでみたり、OPNsenseをイチから構築してみたりなどもしていましたが、ここ1~2年は土日関係なくお仕事していて技術スキルの貯金を作る時間がとれていないことも1つの要因です。

「ビジネスは信頼の貯金で成り立つ」ということは別部署に異動した先輩社員から教えていただいた大切な言葉ですが、チームメンバーや他部署から信頼の貯金を作るベースとなるはずの技術スキルの貯金が底をつきて信頼の貯金まで借金生活になる可能性がちらつくようになってしまったことに耐え切れませんでした。


他のプロダクトへの異動希望を出して、そこで再出発すればよいのでは?ということも考えました。
しかし、技術職は若手社員や派遣が手を動かしてやるものであり、経験を積んだ社員や管理職は人を動かしてナンボという考えが強いので、希望通りのことができるのも最初だけで、プロダクトについてある程度わかった時点で結局これまでと同じ業務に戻って同じ壁と対面する未来が見えています。

数年前に前の部長とどこかで話をした時に言われたこの言葉は今でも覚えています。
「管理職としてメンバーによりよい評価をつけてあげたい気持ちはある。だけど、そうすると管理職へのキャリアパスしかないから、ITエンジニアのスペシャリストとしてキャリアを積みたいメンバーとのギャップがどうしても生まれてしまう。それを承知でITエンジニアを続けてるメンバーもいるが、評価は頭打ちしてしまってどうにもならない…」
制度改革は少しずつ進んでいますが、実態はこの言葉がすべて語ってくれています。


理由2:セキュリティプロダクトをめぐる政治に疲れた


個人的な理由は先ほど述べたとおりですが、周りのメンバーや社内の雰囲気はよかったので、がんばろうと思えばがんばることもできたかもしれません。
しかし、そのがんばる気力をすべて無にしたのは、この2つ目の理由です。

まず社会人1年目に、私が初めて担当したプロダクトが何の前触れもなくいきなり他のグループ会社に持っていかれて、我々の業務が大幅に減少してしまうという経験をしました。
この経験は、いまでもすごく印象に残っています。

それから2~3年後、次は企画営業技術がいきなり別会社に分断されるという経験をしました。
同じプロダクトを扱っているにもかかわらず、会社が変わったために事業所も別れてしまい、何かしらのお伺いを立てる際にも会社間の調整が入って調整ごとが非常にやりづらい…という現場から見ると何のメリットがあるのかまったくわからない組織変更で、いまでも現状は変わっていません。
調整ごとが増えた主な原因もここにあり、現場レベル以上に管理職の負荷も目に見えて上がっていることは、今後について考える大きなきっかけとなりました。

そして今年、私も一部協力していた新しいセキュリティのサービスを作ろうというプロジェクトが、途中でいろいろあってこちら側に企画とリリースをさせるだけさせてその後の販売/サポートに入ることができず、すべて他のグループ会社に持っていかれる…というデジャブのような経験をしたのが決定打になりました。

自分の頑張りが会社にも自分にも返ってくるわけでもなく、いったい何のためにセキュリティやってるんだろう…という思いが募り、完全に折れてしまいました。
もう少し無関心に過ごしていればこんなことにならなかったのかもしれませんが、ダメでした。



転職活動をしてみて



もともと30歳までは地を這い泥水すすってでもがんばると決めてたので、そこまでは転職サイトで他社ではどんな仕事をしているのかという情報収集をしているだけだったのですが、30歳を過ぎたタイミングで実際に活動を開始しました。

実は最初に転職活動を開始してから半年くらいで某社から内定をいただいていたのですが、業務内容など今後そこで働く将来を考えたときに少しだけしっくりこなかったこともあり、内定を辞退させていただいたという過去がありました。

それから1年ほど時間が経過して転職活動を再開したときには、自分がどんな業務をしたいかということに主眼を置いて転職活動を行い、その分だけ職務経歴書を送る会社の幅は狭くなったのですが、ドンピシャの会社からオファーをいただけました。
転職するにあたり、セキュリティベンダーでセキュリティ漬けになりたいという気持ちと、AWS SAPの資格を取得していたことを評価していただいたことは素直にうれしかったです。



これから



セキュリティエンジニアとして改めてキャリアを積む機会をいただけたことに、まずは感謝したいです。
ブランクもあり技術スキルの貯金がほぼほぼなくなってしまっている状況ですので、AWSやAzureのAssociateレベルの試験を受験しながら感覚を戻していく予定です。

そして、セキュリティエンジニアとして自分がいいと思えるプロダクトを提案・構築することで世の中に貢献していき、きちんと技術と信頼の貯金を貯めることができたら、ゆくゆくはチームや組織のエンジニアリングにも改めてチャレンジしていくことができればと思います。